「サウナは健康に良い」と耳にする機会が増えました。ととのう体験やストレス軽減など、確かに多くの効果が報告されています。
しかしその一方で、体調不良やめまい、脱水症状など、「体に合わない」「逆にしんどくなった」といった声も少なくありません。
この記事では、サウナのメリットとリスクを医学的視点からわかりやすく解説し、「正しい付き合い方」を知っていただくためのガイドとしてまとめました。
サウナ=健康?その常識を見直してみよう
「サウナは身体に良い」は本当か?ブームの背景
近年、「サ活(サウナ活動)」という言葉がSNSを中心に流行し、空前のサウナブームとなっています。ですが、その健康効果については一面的に語られることが多く、リスクについては見落とされがちです。
サウナ施設が増加し、利用者層も若年層から高齢者まで広がる中で、正しい知識を持つことが重要となっています。「気持ちいい」だけで判断せず、科学的な視点も取り入れましょう。
サウナの健康効果:血流促進・ストレス軽減など
サウナには血管を拡張し血流を促進する作用があり、冷水浴との交互作用で交感神経と副交感神経のバランスが整います。研究ではストレスホルモン(コルチゾール)の低下も報告されており、精神面への効果も注目されています。
また、筋肉の緊張を緩め、疲労回復を助ける働きもあります。免疫力の向上、慢性疾患の予防などに関する研究も進んでおり、総じて健康促進効果が期待されています。
“ととのう”ってどういう状態?脳と自律神経の反応
「ととのう」とは、サウナ→水風呂→休憩という一連の流れの後に感じる多幸感や脱力感のこと。脳内ではエンドルフィンが分泌され、快感とリラックスが混在した状態になります。
この状態では、思考が静まり「無」や「安心感」に包まれると報告されており、瞑想的な効果に近いという声もあります。ただし、この感覚を過度に追い求めることで、無理な入浴や過剰なルーティンに陥る危険もあるため注意が必要です。
サウナに潜む健康リスクとは?注意すべき症状
長時間の高温状態は心臓や脳への負担が大きくなり、脱水・めまい・立ちくらみ・不整脈・意識喪失などが起こる可能性があります。特に高齢者や持病のある方は注意が必要です。
さらに、サウナ後の血圧低下により転倒や怪我をするケースも報告されており、公共施設では事故防止のための注意喚起が進んでいます。
サウナの入りすぎが引き起こす身体への影響とは
毎日のように高温のサウナに入ると、疲労感が残りやすくなる、寝つきが悪くなる、のぼせやすくなるなど、いわば“サウナ疲れ”のような症状が見られることもあります。
また、交感神経が過度に刺激され続けると、自律神経の乱れやホルモンバランスへの影響も指摘されています。体調を整えるはずのサウナが逆効果になってしまうこともあるため、節度ある利用が大切です。
サウナを正しく楽しむために知っておきたいこと
サウナに入る前に確認したい健康状態と体質
体調が優れないとき、空腹・満腹時、脱水気味のときは入浴を避けるべきです。また、心臓病・高血圧・てんかんなどの既往がある方は、事前に医師に相談するのが安心です。
特に高齢者・妊娠中の方・糖尿病患者などは、体温調節機能が弱くなっている場合があるため、自己判断での長時間入浴は避けましょう。
入浴時間・温度・水風呂の適切な目安とは?
基本は「無理をしない」ことが大切。一般的にはサウナ室での滞在は5~10分程度、水風呂は10〜20秒から始め、体の反応を見ながら調整しましょう。温度は高すぎると交感神経を過剰に刺激してしまいます。
水風呂に入る際は「心臓から遠い場所」からゆっくりと水をかけるようにして、急激な温度変化を避けると安全です。寒暖差によるショック症状のリスクも忘れてはいけません。
サウナ後に起きる体調不良を防ぐための対策
- 十分な水分補給をする(特に電解質も含んだ飲料が理想)
- 頭を冷やしながら徐々に心拍を落ち着ける
- サウナ後すぐのアルコール摂取は控える
- 目を閉じて安静に10分程度休む(クールダウン)
体温が平常に戻る前に動きすぎると、疲労感や頭痛につながることもあるため、クールダウンの時間も「サウナの一部」として大切にしましょう。
医師や専門家が勧める“安全なサウナ習慣”とは
週に2~3回、1日1セット程度に抑え、気分が悪くなったらすぐに出ること。また、サウナ後の「休憩タイム」こそが自律神経の調整に最も重要であるとされています。
自宅や簡易サウナを使う場合も、換気や水分補給のルールを決めて、生活リズムに無理のない範囲で取り入れるようにしましょう。
サウナと上手につき合うための自己管理ポイント
- 入浴前後の体調記録をつける
- 水分・食事・睡眠といった生活習慣を整える
- 他人と比較せず「自分にとって心地よい範囲」で楽しむ
- サウナ利用後の疲労度や睡眠の質を記録してみる
こうした記録を続けることで、自分に合った頻度や温度帯が見えてきます。身体の声を無視しないことが、サウナとの理想的な付き合い方です。
結論:サウナは“万能薬”ではない、正しく使えば“味方”になる
サウナはたしかに素晴らしいリラクゼーション手段です。しかし、「ととのう=健康」ではなく、正しい入り方と自己管理が伴って初めてその恩恵を享受できます。
過度な期待をせず、日常生活のひとつとして取り入れることで、サウナは心身のバランスを整える頼れる「習慣」となってくれるでしょう。
今の自分の体調や生活習慣を見つめ直しながら、サウナと長く・安全につき合っていきましょう。
🔗 参考文献
- Laukkanen, T. et al. (2015). Sauna bathing is inversely associated with dementia and Alzheimer’s disease in middle-aged Finnish men. Age and Ageing.
- Hannuksela, M. L., & Ellahham, S. (2001). Benefits and risks of sauna bathing. The American Journal of Medicine.
- 日本サウナ学会「サウナと健康に関する国内調査報告(2022)」
- 医療法人社団やすらぎ会・渡辺内科クリニック『サウナ入浴と循環器疾患の関係』
- A. Lee et al. (2020). Effects of heat exposure on cardiovascular and metabolic health. Physiology Journal.
- 日本循環器学会「入浴・サウナ利用と循環器疾患の関係(2023)」